所得税と法人税は税率が違う!

 まず最初に、皆さんに知っておいていただきたいのが、所得税と法人税では税率が違うということです。

 こちらが所得税の速算表です。

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 注目していただきたいのは、所得税では、所得額が大きくなるにつれて、税率も高くなっているということです。このような仕組みを「累進税率」と呼びます。

 一方、法人税の税率は、一律の25.5%とされています。資本金が1億円以下の中小法人については、800万円以下の所得部分については19%という優遇税率が認められ、しかも、平成27年3月31日までは、さらにお得な15%という税率となっています。中小法人を前提とすれば、法人税率は以下の通りです。

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 これらの二つの表を見比べれば、法人と個人とは、税金面でどちらがお得かわかるでしょう。

 単純計算をしてみれば、売上高から必要経費を差し引いた総所得金額が330万円以下の場合には、個人事業の場合の所得税率の方が安く、330万円を超えると法人が有利になってきます。

 ところが、実は、それほど単純ではありません。
累進税率というのは、一定の所得金額を超えると、いきなり全体に対する税率が上がってしまうというわけではなく、超えた部分の所得に対してのみ高い税率がかかる仕組みです。
このため、以下の試算の通り、総所得金額が1,000万円を越えるようにならないと、法人の方が税金が安いということにはなりません。

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所得を分散すると・・・

所得を分散すると・・・

 所得が1,000万円を超えないと効果が出ないと言うのであれば、ほとんどの個人事業主にとって、まだまだ先の話となってしまうかもしれません。ところが、それにもかかわらず、多くの個人事業主が法人を設立するのは、不思議な話です。

 実は、先ほどの計算は、現実的にはあり得ないモデル計算に過ぎません。だって、法人でビジネスをしている人が、役員報酬を1円も受け取らないというのでは生活できませんよね。
そして、法人の場合には、総所得を法人所得と役員報酬とに2分割するという話を忘れてはいけません。法人を設立して、この2分割を上手に活用すると、次のような合理的な節税が可能となるのです。

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 税金の総額が50万円ほど安くなりました。実は、法人と個人に所得を分散することで、低い税率の適用範囲を広げることによって、税金を安くすることができるのです。

 ところが、実は、この計算は正しくありません。もうひとつ重要なルールがあるのです。そして、このルールのおかげで、税金を、さらに安くすることができます。

給与所得控除

給与所得控除

 そのルールとは、「給与所得控除」という仕組みです。これは、給与所得の計算においては、会社からもらう給料すべてに税金がかけるのではなく、給与から一定の額を控除し、その残りにだけ所得税が課税されるのです。

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 この計算でわかる通り、給与所得の場合には、700万円を受け取っていても、わずか510万円にしか課税されないということです。
 この給与所得控除という制度は、
「会社から給料をもらうサラリーマンだって、必要経費はかかるよね。だけど、給与所得には、確定申告などで経費を差し引くという計算が認められていないんだよね。だから、サラリーマンの場合は、領収証が無くっても、収入に応じた一定の額を必要経費の分として差し引いて上げましょう。」
という制度です。そして、この給与所得控除こそが、個人事業主よりも会社を作った場合に有利に働く最大の材料になるのです。

 何しろ、会社を作った場合、実際に支払った経費、つまり領収証があるものについては、洩れなく会社の経費にしますよね。そうやって会社の利益から差し引くことによって、法人税が安く済みますから。

 そして、手許に1枚も領収証が無いという状況から、さらに役員報酬の一定割合を給与所得控除として差し引いて構わないわけです。
 具体的には、次のようになります。

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 ご覧のように、実際に支払った経費の額は同じでも、税金の額が100万円も減っています。かなり節税できました。
 小規模の個人事業主が、いつの間にか法人経営に切り替わっている(これを「法人成り」と言います。)のを良く見かけますが、この法人成りは、このような節税効果を狙っているわけです。

 先ほど、所得の総額が1,400万円ほど無ければ、法人成りは節税効果が無いような説明をしましたが、実際には、この給与所得控除を活用できますので、所得総額がもっと少ない状況でも法人成りの節税効果を手に入れることができます。

 ただし、法人の設立手続きで25万円ほどのお金がかかりますし、法人を運営しようと思えば、税理士への支払などを含めて、毎年40万円以上のコストアップが見込まれますので、ひとつの目安として、所得総額が700万円を超えるようであれば、法人成りをお薦めします。



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