法人は経費の範囲が広い

 個人事業主と会社とでは、経費面でも違いがあります。全般的には、会社の方が、経費面での柔軟性に優れていると言えます。

①借上社宅

法人は経費の範囲が広い

 たとえば、自宅兼事務所として利用しているときの家賃は、個人事業主の場合であれば、床面積などを基準として事業に使われる部分と住居部分とに按分計算して、専ら事業に遣われる部分しか経費とすることはできません。住居部分は、1円も経費とすることができないわけです。

 ところが、法人の場合であれば、賃借契約を法人で行い、役員の借り上げ社宅として取り扱うことによって、住居であったとしても、その家賃のおおむね50%を経費とすることができるようになります。

②生命保険料

 また、個人事業主のための生命保険料は、所得税の計算において、最大でも12万円の生命保険料控除しかありません。仮に、1年間で100万円の生命保険料を支払っていたとしても、わずか12万円、保険の種類によっては、たったの4万円しか引いてもらえないということになっています。

 ところが、契約者と受取人の両方を法人として生命保険に加入していれば、社長に対する生命保険であったとしても、保険の種類によっては、支払額の全額を経費として扱うことができます。先の例で言えば、たったの4万円と100万円ですから、これは見逃すことのできない差ではないでしょうか。

 この生命保険等を利用すれば、経費として節税しながら、資金を外部留保し、これで将来の退職金を積み立てるなんて技ができるのも、会社組織の場合だけです。

③社長に対する出張手当

 さらに、出張があった場合に、個人事業主と法人では差が出るケースがあります。

 往復の交通費や宿泊代は、当然経費とすることが可能で、これらは個人事業主の場合でも法人の場合でも変わるところはありません。
 ところが、法人の場合には、社長さんにも「出張手当」を支給することができるようになります。
 この場合、事前に「旅費規定」を作成し、出張手当の金額を明記しておくことによって、会社としては経費扱いになると同時に、その手当てを受け取った社長さんの側も、所得税が課税されない非課税の収入となりますので大変重宝します。もちろん、異常に高額だと論外ですけどね。

④慶弔費

 また、慶弔費も同様です。個人事業主の場合、身内の冠婚葬祭費用はプライベートな支出とみなされ、経費として認められないことが多いようです。
 しかし、会社を作った後で、「慶弔規定」を整備しておけば、見舞金や弔慰金、出産祝いや結婚祝いなど、慶弔規程に基づく範囲で、プライベートな支出と見られがちなものでさえ、遠慮なく経費扱いにすることができます。

青色繰越欠損金も法人が有利

青色繰越欠損金も法人が有利

 個人事業主の場合は1月1日から12月31日までの暦年を「会計期間」としていますが、会社の場合は、決算期を自由に決めることができますので、自分の都合のよい時期に決算事務を行なうことができます。

 そして、この会計期間の間に生じた黒字や赤字の金額を計算し、それにあわせて税金が徴収されるわけですが、個人だろうが会社だろうが、商売は生き物ですから、去年は赤字で、今年は黒字、来年はまた赤字などとなるケースがあります。

 そんなときに、たまたま今年が黒字だからといって課税されていたら、過去の赤字分の補填に何年かかるかわかりませんよね。

 そこで、
「青色申告をしている事業者が赤字となってしまった場合、その赤字を翌年度以降に持ち越して、黒字だった決算期に相殺してあげましょう」
 という制度があります。それが「青色欠損金の繰越控除」という制度です。

 個人事業主の場合、繰越欠損金は3年間持ち越すことができます。つまり、欠損金が発生してしまっても、翌年から3年分の黒字と相殺することができるため、しばらくの間、納税額をゼロとすることもできるわけです。

 また、会社の場合は、その逆の方法として、前年の黒字を当年の赤字と相殺することもできます。これを「青色欠損金の繰戻しによる還付」制度といいます。

 この制度は、個人事業主には適用されませんので、会社特有のメリットとして活用できます。

交際費の上限額

 法人と個人事業を比べると、多くのケースで法人が有利ですが、法人にも弱点が無いこともありません。

 例えば、「交際費」の支出です。接待にかかる飲食代や、贈答品などで支出する交際費は、個人事業主の場合は無制限に経費として認められますが、法人の場合は、総額に上限が設けられていて、その上限額を越える部分は経費として認めてもらえないということです。

 法人における、この交際費の制限は、今から7年前の平成18年までは、年間わずかに400万円まで、しかも、その400万円についても支出額の90%しか経費として認めてもらえませんでした。

 例えば、1年間で500万円の交際費があった場合、個人事業主であれば、500万円全額を経費にできましたが、法人の場合には、360万円しか経費にできなかったのです。
 このため、全額を経費として認めてもらえる個人事業主の方が有利とされてきたのです。

図版

 しかしながら、このように法人に設けられた交際費の上限額も、最近は増やされる傾向にあり、昨年までは年間600万円までとされ、今年から年間800万円までと枠が広がった上に、10%を経費として認めないというルールも無くなりました。
 このため、法人も制度的に遜色がなくなってきました。年間800万円も枠があれば十分ですよね。

 それでも、、個人事業主は全額が経費となるという点は変わっていませんので、多少は、個人事業主の方が有利かもしれません。

 もちろん、個人事業主であるからと言って、なんでもかんでも経費になるわけではありません。友人との飲食代や、家族で行った旅行など、事業と関係のないプライベートな支出は、さすがに経費として認められません。
 ですから、交際費は、支出した先、接待した相手方、その意図をいつでも説明できるようにしておくことがポイントです。



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