独立開業の前に立ちはだかる壁

 そうは言うものの、全てを自己責任として受け入れることとなるのが独立開業。
目の前には大きな壁も立ちはだかります。

事業失敗のリスク

 サラリーマンであれば、会社から与えられた仕事を忠実にこなしているだけで、あらかじめ約束された給料を受け取ることができます。勤め先が大きな会社であればあるほど、勤め先の倒産によって職を失うという恐れも少ないでしょうし、それほど簡単に解雇されるということも無いでしょう。

 もちろん、可能性という意味では、大企業であっても破綻のリスクはありますが、独立開業の場合とは比べ物になりません。
 独立開業の場合、事業に失敗するというリスクは極めて高いものと考えられ、その場合は、職を失って生活費を稼ぐことができなくなるだけでなく、場合によっては、大きな借財を抱え込むという恐れもあります。

資金調達の難しさ

資金調達の難しさ

 以前から言われていることですが、独立開業したばかりの事業に、お金を貸すところは、それほど多くはありません。
 融資の審査においては、それまでの事業の実績が大きな判断材料になるわけですが、独立開業したばかりの事業は、過去の実績という最重要な判断材料を欠くこととなります。

 しかも、オフィスからパソコンまで、ありとあらゆるものを自身で用意しなければなりませんので、初期投資は想像以上に大きなものとなります。オフィスを借りるだけでも、保証金などのまとまったお金が必要になりますし、事業が軌道に乗るまでの期間を食いつなぐためにも、それなりの蓄えが無ければ不安です。

サラリーマン時代とのギャップ

 独立開業をして間もなく厳しい現実を突きつけられることもあります。それまでの取引先から、突然、相手にされなくなったり、会社員時代の人脈が思いのほか役に立たないというケースも少なくありません。所詮、名刺の力で商売ができていただけということも少なくないのです。

 また、新設法人なんてものは生まれたての赤ん坊と一緒で、何から何まで面倒を見てやらないと、何もできません。それまで総務部がやってくれていたこと、経理部がやってくれていたこと、今までにやったこともないありとあらゆる仕事を自分ひとりでやらなければ埒が明きません。

 そして、そんなに大変な仕事をこなさなきゃならないと言うのに、約束された収入というものも期待できません。事業で成功しなければ、明日のご飯もままならないのです。
そのような苦労を味わってみると、サラリーマン時代がどれほど楽チンだったか、思い知らされてしまいます。

ファーストペイの原理

ファーストペイの原理

 サラリーマンと事業家では、考え方に大きな違いがあるようですが、その中でも、一番の違いは、「先行投資」という考え方です。
 と言いますのも、事業においては、「まず先にお金を使う」というケースがほとんどで、サラリーマンのように、受け取った給料の使い方を考えるというのとは、かなり違います。

 例えば、喫茶店を始めようと思ったら、店舗を借り、内装を施し、什器や食器を揃え、コーヒー豆やら紅茶やら材料を整えなければなりません。この準備作業の間、お金は出ていく一方で、お店をオープンするまでは、お金なんかちっとも入って来やしません。お店がオープンした後でも、材料は常に先行して買っていかなければなりません。常に、お金を使うことが先行するわけです。

 つまり、事業というものは、まず最初の一手として、お金を使うことから始めるしかなく、その後も先行してお金を使っていくという宿命があります。そして、先にお金を使うという考え方が無ければ、商売を始めることも事業を発展させることもできないのです。このことを私どもは「ファーストペイの原理」と名づけています。

 しかも、事業家というものは「儲けるために」お金を使うわけですから、サラリーマンのような単純な消費行動とは根本的に異なります。「儲けよう」と思うが余り、お金をどんどん使ってしまいます。

 そして、この「ファーストペイの原理」に従うままに、自分の有り金を全部ビジネスにつぎ込んでしまい、さらに借金までして先行投資を行なうわけですが、その結果、思惑通りにビジネスが進まず、お金を使い果たしてしまうということが、当たり前のように起こります。

 サラリーマンであれば、このようなお金の使い方はしなかったのに、独立開業したばかりに財産を根こそぎ失うということが起こるかもしれないのです。



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