人事に関するトラブルは未然に防げ

労働トラブルが増えています

労働トラブルが増えています

 近年、労働環境が劣悪な企業は、労働者や世間から糾弾されるようになってきました。いわゆる「ブラック企業」ってやつです。

 インターネット等を通じて、匿名を利用した雇用・労働問題に関する意見交換が頻繁に行なわれるようになったこともあって、「ブラック企業」の実態が白日の下に晒される場面が増えてきました。そして、これにより、世間や労働者の、雇用・労働問題に対する権利意識・法律意識は、かなり高まっていると言えます。

 2013年に首都圏の労働者を対象に行った調査では、「払われるべき残業代が支払われない」もしくは「有給休暇を申請しても取得できない」等、職場に「何らかの違法状態がある」と認識している労働者は全労働者の約30%にのぼります。

 そのうち違法状態に対して「何らかの行動を起こす」と回答した労働者は約45%にのぼるという結果が明らかになっているのです。(連合総研・第26回「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」調査報告書)

 このような違法状態に対して、労働者は「個別労働紛争解決制度*1」で解決を図るケースも増えてきています。(下グラフ参照)
*1 労働者間での労働条件や職場環境等をめぐる紛争(個別労働関係紛争)の未然防止や早期解決を図るための制度で、「総合労働相談」、「助言・指導」、「あっせん」の3つの解決制度がある。

図版

 個別労働関係紛争の主な原因は、セクハラ・パワハラ等のいじめ・嫌がらせ、解雇、残業代の未払い等の労働条件に対するもの、労働条件の引き下げ等の「労働トラブル」ですが、これらの労働トラブルの主な原因は「就業規則の欠陥、未整備」にあると言っても過言ではないでしょう。

 今後も引き続き多くの労働トラブルが顕在化することが予想されることや、労働トラブルが顕在化した際に会社に与える影響(コスト、信用の失墜、労働者のモチベーション低下等)の大きさを考慮すれば、できるだけ早い段階で最低限の規程類を整備し、リスクに備えるのが賢明と言えます。このような労働トラブルは、創業間もないからといって、貴方の会社で起こらないという保証は無いのです。

就業規則ってどんなもの?

 創業した後に整備しておくべき人事・労務関係の規程類は下表の通り、大きく就業規則と労使協定の2つがあります。

種類創業した後に整備しておくべき規程類
就業規則本則本則
付属
規程
賃金規程
退職金規程
育児介護休業規程
パワハラ・セクハラ防止規程
服務規程
懲戒規程
労使協定時間外・休日労働に関する労使協定
給料の口座振込に関する労使協定

①就業規則

 就業規則は労働者の労働条件や職場における服務規律等を定めた文書です。
会社の状況や法令の改廃等により適時改訂を行うことがあるため、労働時間等の主要な条項のみを定めた「本則」と、賃金、退職金、育児介護休業等の条項を定めた「付属規程」に分けて作成することが一般的です。

②労使協定

 労使協定は所定の事項について労使の合意があることを示す文書で、一般的には下記の労使協定を整備する必要があります。

  • 時間外労働や休日労働が発生することが見込まれる場合には、「時間外・休日労働に関する労使協定」(通称三六協定)を事前に作成し、所轄労働基準監督署長に届出を行う必要があります。
  • 給料を口座振込とする場合には、「給料の口座振込に関する労使協定」を事前に作成し、対象者から口座振込の同意を得る必要があります。こちらは所轄労働基準監督署長に届出を行う必要はありません。

就業規則の作成義務

 就業規則は、現在の労働基準法では「常時10人以上の労働者を使用する事業場」については作成義務がありますが、10人未満の労働者を使用する事業場については作成義務がありません。たとえば、飲食店や美容室などで複数店舗を抱えていても、各店舗の労働者が10人未満であれば就業規則の作成義務はありません。

 しかし近年、「ブラック企業」に対する改善行動は厳しくなってきており、また、労働トラブルを未然に防ぎたいという目的もあって、作成義務の無い企業であっても、就業規則を準備しておこうとする企業は増えてきています。

就業規則の素晴らしい効果

 就業規則を整備する主な効果には、「1.労働トラブルを予防する」ことだけではありません。

No就業規則を整備する主な効果
1労働トラブルを予防する
2労働トラブル発生時に一方的に労働者有利に判断されることを防止する
3受給できる助成金の種類が増える
4トラブルに対して迅速に対応できる
5会社に対する信頼感・安心感を与え、働く意欲を向上させる

労働トラブル発生時に一方的に労働者有利に判断されることを防止する

 労働基準法は法定労働時間を原則1日に8時間、1週間に40時間と定めており、法定労働時間を超えた労働時間は時間外労働となり、時間外手当(=残業代)の支払が必要になります。

 しかし、たとえば就業規則または労使協定で「1箇月単位の変形労働時間制度」を定めることにより、1箇月を平均して1週間当たりの労働時間が40時間を超えなければ、特定の日または週に法定労働時間を超えても残業とならずに、時間外手当の支払が不要になります。
 就業規則等でこのような定めをしておくことで、会社は支払わなくて良い残業代を支払う事態(=労働者有利に判断される事態)を防ぐことができます。

受給できる助成金の種類が増える

 助成金については別頁でご案内していますが、10人未満の労働者を使用する事業場は就業規則の作成義務がないため、就業規則が整備されていなくても一部の助成金は申請可能です。
 ただし、「就業規則への制度化」を必須要件とする助成金は数多くあり、これらはたとえ10人未満の労働者を使用する事業場であっても、就業規則を整備しなければ申請できません。
 就業規則への制度化を要件とする助成金の中には、30万円や40万円程の金額を受給できるものもありますので、しっかり準備しておきたいところです。(詳細はこちらをご参照ください)

トラブルに対して迅速に対応できる

 たとえば問題のある社員が突然会社に来なくなった等の労働トラブル発生時には、就業規則が整備されていない場合はその都度、対応方法を調査・検討することからはじめなければなりませんが、これには非常に労力と時間がかかります。
 しかし、事前に就業規則を整備しておけば就業規則に定めた通りに対応を行えば良いため、このような負荷を軽減し、迅速に対応することができます。

労働者に会社に対する信頼感・安心感を与え、働く意欲を向上させる

労働者に会社に対する信頼感・安心感を与え、働く意欲を向上させる

 就業規則が整備されていれば、たとえば、労働者は就業規則の賃金の章を読めば自分の賃金のことが分かり、人事(格付・等級・役職、人事評価制度等)の章を読めば自分のキャリアプランを考えることができるようになります。
 このようなきちんとしたルールづくりは労働者に会社に対する信頼感・安心感を与え、労働者の働く意欲を向上させます。

 以上、これまで就業規則を整備することの重要性について説明してきましたが、就業規則の作成・整備は専門家である社会保険労務士に依頼することを推奨します。

 就業規則は、記載事項を漏れなく記載するとともに、記載内容を会社の実態・将来像に即する内容にし、他の規程類との整合性・統一性を保って作成を行う必要があり、実践的な就業規則を作成するには高度な専門性が不可欠です。加えて、法令の改正があれば随時、就業規則を改訂していく必要があります。

 これらを行う手間と労務トラブルが発生した際にもたらす影響を考慮すれば、社会保険労務士に依頼するコストは決して高くないと思います。

お問合せはこちらまで

ローズ社会保険労務士事務所
TEL:03-5936-6454
受付時間:9:30~18:00(土日祝日は除く)



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